蜂蜜と巣蜜について

農学博士 赤松 義治
 人間が大量に蜂蜜を利用出来る蜂蜜の種類は数種類である。その蜜蜂達は自分の食料として、又子孫の繁栄のために、時季や処により色々の草や木の花より「花の蜜」と「花粉」を集めて自分達が造った巣に貯える。その蜜や花粉を集めたり育児や巣を造ったりする仕事をするのが働蜂(雌の中性)で、その家族は一匹の女王蜂と僅かな雄蜂と多数の働蜂によって構成されている。

 その蜜を採る事を仕事としている養蜂業者は、季節により色々の花を追いながら移動して蜜を集める。従って菜種、レンゲ、ミカン、アカシア、シナノキ等々の各々味や香気に特色を持った色々な蜜を集めることが出来る。

 しかし蜂が花から集めたばかりの蜜は薄く、そのままでは長く貯えて置くことは出来ないので、自らの巣の温度と、働蜂の煽風によって花蜜の約55%に濃縮される。

 こうして濃縮された花蜜は甘味がよく且つ醗酵しないものとなり比重が1.43以上となって貯蔵され、働蜂の分泌する蝋の蓋によって密封される。

 花蜜から蜂蜜になるには、酵素の作用により蔗糖を転化して、葡萄糖と果糖になる。その割合は花蜜によってまちまちであり、果糖の多いものもあれば葡萄糖の方が多いものもある。蔗糖はそのままでは人間に吸収されず、一度葡萄糖に分解されて始めて吸収され又果糖は果実類に含まれ非常に吸収されやすい糖類である。従って蜂蜜は健康人は勿論のこと老人を始め病人の体力回復にも大変適した食べ物と言ってよい。
 蜂蜜は非常に多くの栄養分を含んでおり先述の糖類の他に、各種のビタミン、酵素及び多くのミネラルを含んでいる。

 又色も香気も花によって異なっており、単に蜂蜜と言っても大変バラエティに富んでおり、人によって色々の好みがある。

色沢 蜜源
淡黄色 レンゲ、ホワイトクローバー、トチノキ
黄金色 ミカン、ナタネ、サクラ
暗褐色 ソ、クリ、雑草

 一般に日本人は淡白な香味のものを好む様であるが、欧米人は味も香気も濃いものを好む様な傾向がある。

 これをチーズに例えれば日本人は始めはプロセスチーズを好んで喰べたが、最近では段々とナチュラルチーズを好む様な傾向になって来て今ではデパートは勿論ちょっとしたスーパーマーケットでも十数種類のナチュラルチーズを常に売る様になってきた。

 それはプロセスチーズだけではチーズに馴れるにつれて何となく物足りなくなり、何百とあるナチュラルチーズの中から自分の好むものをその時に応じて喰べる様になって来たのと同じ様になるにちがいない。

 その様な蜜の中でブレンドされない一番純粋な蜜は巣蜜である。では巣蜜とはどういうものなのかと言うと、一定の大きさの框の中に巣を造らせ、それに貯蜜させ濃縮させ完全に蓋をさせたもので、総て蜂によって造られたものであり、人間の手によって巣から蜜を集めたり、ブレンドされたものでなく、盛んに蜜が集められる僅かな時期しか造る事が出来ない。従って欧米では清潔甘味な高級品として盛んに愛用されている。

 わが国では近年蜂蜜の需要が増え過半数が輸入されているが未だ巣蜜の需要は少なく、国内では殆ど生産されていないが蜂蜜の需要の増加と共にこの様な色々の種類の高級品が輸入されてほしいものである。

 尚この巣蜜の喰べ方であるが例えばそのままパンに巣ごと塗って喰べればよい。この蜂蝋(巣)は工業用の他、薬用や菓子類にも広く利用されているものであり何等人にとって差支えないものである。


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